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中国でmRNAワクチン承認の日はくるのか?中国製薬業界の最新ニュース【フォースンファーマ】

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以前の記事で、中国大手製薬会社 上海復星医薬(フォースンファーマ)がドイツのビオンテック社と提携契約を締結し、新型コロナワクチンの中国本土および香港・マカオ・台湾地域における臨床開発および商業化権益を最大8500万米ドルで獲得した話や中国のmRNAワクチン事情について述べました。

実はあの記事を出した以降、フォースンファーマ「復星医薬」の株価が非常に下がっていっています。

特にここ最近、メルクの第3相試験結果のニュースが発表されたことにより、更に下落中です。


TradingView提供の2196チャート

今回、ここでいくつかフォースンファーマが停滞している原因と今後の中国でのmRNAワクチンの方向性について述べていきます。

目次

中国でmRNAワクチン承認の日はくるのか?

現在の上海復星医薬(フォースンファーマ) について

結論から申し上げると、
2021年10月9日現在未だ上海復星医薬( フォースンファーマ)が委託を受けたビオンテック(ファイザー)製mRNAワクチンは未だ NMPA (国家食品薬品監督管理総局 )からの承認を受けることが出来ていません。

中国国内では第2相臨床試験を行っていますが、そこで止まっております。当初、緊急使用承認(EUA)を狙って、既に当局へは申請済みですが、実質保留状態です。

本家のファイザー製ワクチンはEUA(緊急使用承認)だったものが、米国FDAから2021年8月23日正式承認されたため、中国でも「いよいよ承認が下りるのでは」と期待されました。
しかし、残念ながらmRNAワクチン接種は中国市場上未だ認められていない現状です。

一方で、フォースンは完全にmRNAワクチンの生産が出来ていないわけではありません。

以前の記事でも紹介しましたが、ビオンテック製ワクチンにおいて、フォースンファーマは中国本土および香港・マカオ地区、台灣での独占販売権を持っています。
2021年前半に香港・マカオ地区で販売された同ワクチンの売上高は5億元(約85億円)を超えています。

※台灣は、後述しますが、2021年前半にはビオンテック製ワクチンを購入・輸入できていません。

そのため、現在のBNTワクチン関連は輸出ビジネスのみ稼働している状況です。

とはいえ、中国国内という巨大市場での販売権を持っているにも関わらず、全く国内販売の目処がついておりません。
結果、8月後半からジリ貧を迎えていたフォースンファーマ株価が、10月4日に暴落(株価20%下落)を起こしてしまっています。


その原因は下で述べるメルクの経口治療薬の発表です。

メルク(Merck & Co.)の経口治療薬の誕生

10月1日中華人民共和国国慶節の日、とある重大ニュースが発表されました。

アメリカの大手製薬バイオ企業メルク(Merck & Co.) が、Ridgeback Biotherapeuticsと共同してMolnupiravir(中国語名:莫那比拉韋)を開発し、この「特効薬」が第3相臨床試験データ上でコロナ軽・中等症患者の入院死亡率を50%低下させたとのことです。

これを受け、メルクの株価は12%一気に上昇しましたが、
一方でフォースンファーマの下がり続けていた株価は更に大ダメージを受け、株価が20%暴落してしまいました。

ちなみに、モデルナも株価11%下落しております。このように、経口治療薬が進むことで全体的にワクチンへの需要低下の懸念が株価にて現れました。

とはいえ、メルクも中国国外の外資製薬会社ですので、中国国内製薬市場にどのような影響を与えるのか、まだ今の段階では不明です。

中国政府及びNMPAがNOを突きつければ、中国内資製薬会社は自分たちで経口治療薬を開発せねばなりません。

中国競合製薬バイオ企業の追い上げ

中国では、一定数本土派と呼ばれる中国内資製薬企業支持派が存在しています。日本人が日本内資製薬企業へ絶対的な信頼を寄せているようなものと同じ現象です。

そんな中国内資製薬会社でもmRNAワクチン開発承認申請へ追い込みをかけており、架橋を迎えつつあります。

例えば、Walvax Biotechnology Co(沃森生物)は、中国軍事科学院軍事医学院及び蘇州艾博生物科技有限公司(艾博生物)と共同で、中国初のmRNA型の新型コロナウイルスワクチンを生産すべく、工場を10月にも稼働することを発表しました。中国国内で年間2億剤分生産するとのことです。

現在、高齢者を含めた18歳以上を対象に中国国内で第3相臨床試験を実施中です。海外でも、メキシコ、インドネシア、ネパールでも第3相臨床試験を実施しています。

中国政府やNMPA (国家食品薬品監督管理総局)が、中国製の良さを世界・中国人民にアピールする良い材料として中国製の審査を優先している…といった噂もありますが、果たしてこのmRNAワクチンがビオンテック・フォースンを超えて先に承認されていくのでしょうか。

(安全で効果がしっかり審査承認されていけば、どういう順番で承認されても異論はないですが、フォースンファーマ費用対効果が低すぎて、少し可哀想なような。)

とはいえ、 沃森生物の株価自体も、8月の2021年中間財務報告発表以後メルクの件あり現段階では急落中です。

SZ – 300142 (深セン証券取引所)

【コラム】台灣政府によるビオンテック製ワクチンの買付け

以前、フォースンファーマの企業研究時の記事にて、台灣政府がBNTワクチンを買い付けられない件について述べました。

これについてですが、TSMC(台湾積体電路製造)や鴻海等の協力の下、台湾政府はBNT製ワクチン(BNT162b2)を1500万剤分確保することに成功しました。2021年9月2日より少しずつ台灣に届き始めています。

ビオンテック本社(欧州)から仕入れたものもあるようですが、台灣で既に輸入したワクチンのいくつかは上海復星医薬で生産されたもの(ラベルが簡体字表記)です。

上海復星医薬(フォースンファーマ)は投資会社と化す?

以上のような形で、現在散々な目にあっている?フォースンですが、投資は上手くいっているようで、「投資会社」「医薬業界のPE」と揶揄される自体です。

利益の半分は「投資による収入」

復星医薬は国内医薬業界のトップの一つだが、上半期の売上、純利益、親会社への還元純利益の伸び率はいずれも業界平均を下回っている。

復星医薬の2021年上半期の売上高は前年同期比21%増の169.5億元。親会社に帰属する純利益は24億8000万元で、前年同期比で45%増加した。減損純利益は15億7000万元で同20%増加した。同期間、国内医薬・生物業界全体の営業収入は1兆796億元で、前年同期比22%増。親会社に帰属する純利益1232億元を達成し、前年同期比で46%増加した。非償却後帰母純利益は1071億5000万元で、前年同期比46%増となった。

また、復星医薬の利益の約半分は投資によるもので、「医薬業界のPE」は名実ともにそうだ。復星医薬の今年上半期の純利益25億元のうち、投資収益は11億7100万元に達し、47%を占めた。その裏には巨額ののれんの蓄積がある。復星医薬の今年上半期ののれんは86億2200万元に達し、2020年の非純利益の約3倍となった。

https://www.163.com/dy/article/GLQAO0U7052184FQ.html

投資も企業戦略に当たりますので、このこと自体について今回意見はしませんが、
パイプラインが行き詰まっている際に投資で会社を回せていることは、今の中国の製薬市場で上手く立ち回れているのではないでしょうか。

おわりに

かなり早い段階からビオンテックと交渉し、設備投資へ多額を投じていた上海復星医薬(フォースンファーマ)ですが、
中国で外国の最新技術を輸入することはまだ難儀するようです。

BNTワクチン承認が早いか、 沃森生物等の中国内資製薬企業集団のワクチン承認が早いか、もしくはメルクの経口治療薬といったワクチン以外の薬が先を行ってしまうのか、今後も動向に目が離せません。

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